2007-10-16

UNRWAのGlobal Educatioについて

ハムゼの日本に来たミッションの一つは、日本のLCAや総合学習の経験をUNRWAのGlobal Educationの取り組みの中に適応、普及させていくことです。

そこで、UNRWAのGlobal Educationについて少し説明をします(ハムゼの説明より)

【Global Educaitonとは】
UNRWAは2000年からGlobal Educationのアプローチを教育に組み込んでいくことを決定しました。もともとこのGlobal Educationという考え方は、カナダがシリア政府に対して資金援助したプロジェクトです。プロジェクトが終了した後、シリアの学校ではほとんど忘れ去られているようですが、UNRWAはこの取り組みが非常に教育で必要であると考えました。そこで、プロジェクトが終わってからも引き続きGlobal Educationを推進しています。

もともと、カナダによって紹介されたGlobal Educationでは、民族間の紛争や戦争、異文化不理解の解消を目的としていました。しかしながら、イスラエルとまったく仲良くする気のないシリアはそのコンセプト)は取り入れることができなかったのですが、そのアプローチに関しては意味を確認することができたため、教育に取り入れることを決定しました。Global Educationのアプローチというのは、今私たち関大がシリアで実施しているLearner Centered Approachと類似しているものです。

例えば、協調学習やグループ学習を取り入れることによって、仲間たちと問題解決したり、課題(Task)を仲間同士で取り組み、信頼、自尊心、尊敬といった情緒面の育成も図っています。また、評価も教師によってされるのではなく、自己評価や他者評価を通してメタ認知、思考力、判断力も育成したりします。つまり、試験で評価し数字として点数をつけれる学力だけでなく、見えない学力を育てることも目的としています。

Global Educationを実施する際、以下の4つのDimentionを重視しなければいけません。
1)Time:現在の出来事は、今突然起こったことではなく、過去からの積み重ねである。現在を捉えるとき、過去との関係性の中で現在について考える必要がある。また現在は未来へつながっていくため、現在の出来事を長い目で捉えていく必要がある。
2)Place:場所というものは自分たちがいる場所だけを示しているのではなく、グローバルに捉えていく必要がある。環境問題にしても、もはや一国の問題ではなく、国境を超える問題である。物事を考える際にグローバルに物事を考える習慣をつける必要がある。
3)Self:自尊心など。自分の存在を認め、他者との違いを認め受け入れていく必要がある。
4)Issues:事象を単眼で捉えるのではなく、多角的に捉えていく必要がある。科学的な視点、認知的な視点など様々な視点から物事(事象)を判断していく必要がある。

【日本とUNRWAの取り組みの違い】
・ 日本は総合学習といったGlobal Educationのための特別な時間を確保しているが、シリアにはそういう特別な時間はない。→十分な時間をUNRWAでは確保できない。
・ UNRWAでは、Global Educationは主要科目に適応するものであると考えており、そのための特別か学習活動などはない。科目ベースである。
・ 学習環境が違いすぎる。※詳細は、以下のLCAを実施する際の問題点を参照
・ 学習のリソースが日本は豊富だが、UNRWAはだいぶ不足している。
・ 日本の学校は1シフトだが、シリアは2シフトであるため、授業後に自由な時間を作りにくい。
・ 教師の生活状況(ほとんどの教師が、教師以外に他の仕事している)
・ もともと5年生6年生だけの取り組みであった。今は全学年でGlobal Educationが推進されているが、先生はそのためのトレーニングを受けていないため、コンセプトも理解していない人が多い。

【UNRWAでLCAを実施する際に伴う問題点】
・ 教師のオーバーロード(過剰な仕事量)
・ 生徒の数(少なくても1クラス50人以上いる)
・ 家具(丸テーブルや移動式椅子がない)
・ 場所(日本のような多目的室や自由に使える場所がない)
・ リソース(資料や書籍がだいぶ不足している。またインターネットなどのアクセスも不安定)
・ カリキュラム(一回の授業でカバーしなければいけない内容が多すぎて、時間をかけてじっくり学習させることができない)
・ 教師自身がGlobal Educationを経験していないため、イメージをもてず実践できない
・ Global Educationのためのトレーニングやワークショップがない(カナダからのドネーションが終わってから実施されていない。そのため、1年生から3年生の先生はほとんどGlobal Educationのコンセプトを知らない。

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