2007-10-02

ディスカッション 

今日は、高校の先生および慶應大学院の院生をしているFUKUMIさんと、岸、田邊そしてハムゼの4人で3時間ほどにわたるディスカッションをしました。

テーマは以下のとおりです。
1)授業設計 
(ハムゼ主張)講義型の授業はしてはいけない。必ずどこかにアクティビティをいれなければいけない。
(岸・田邊主張)講義方の授業もまた授業である。学習者の状況に応じた方法を採用すべきであり、「・・・でなければいけない」ということを他者から強制されるのではなく、教師と生徒のコミュニケーションや相互関係の中で教師が最適なものを選択し、適応する。
(FUKUMIさん)一生懸命教師が働きかけないと勉強しない生徒がいるから、講義方の授業は難しいと思う(※彼女は高校で古文や漢文を教えている)

2)授業の単位
(ハムゼ)授業というものは、一つの授業で一つが完結するので、一つの授業をみればその授業のよしあしが分かる。
(岸・田邊主張)授業というものは、ユニットで捉えることができる。ユニットの単位は、単元であるかもしれないし、学期で捉えることができるかもしれないし、いろんな単位がある。たった1回の45分の授業に様々な学習目標を組み込みそれをすべて45分の間で達成するのは難しい。しっかり覚えさせなければいけない場面では、ドリル学習や講義さえも必要になることもある。
※講義型がよいということを主張しているのではなく、授業の形態には様々なものがあり、教育目的に応じて決めることが望ましいということ。

3)個人の学習スタイルに合わせた授業展開
(ハムゼ主張)知識伝達の授業の場合、実際にやって学習することを好む生徒(Kinesthetic learning)、聞いて学習することを学ぶ生徒(Auditory learning)、視覚を通して学ぶ生徒(Visual Learning)がいるため、講義だと生徒の多様な学習スタイルに対応できない。
(岸主張)それに関しては同意だけれど、実際UNRWAの先生にインタビューしたところ、UNRWAの生徒は、逆に協調学習より講義型を好む生徒がいると聞いた。日本のように学校自体が学びの共同体として協同して学習することが多い文化ならまだしも、今まで完全に個人主義の方法を採用してきたUNRWAでいきなり協調学習を導入することで生徒が動揺し何をすればいいか分からず混乱している生徒もいるという。個人の学習スタイルについて述べるのであればしっかりした調査が必要。

4)Group workや協調学習の重要性は認識できたがそれをどのようにUNRWAで適応できるのか。
(ハムゼ)機材や学習環境が整っていないので難しい。
(岸)環境の問題ではない。

5)転移
(ハムゼ)UNRWAの生徒は、紙面上でのテストの成績はすばらしいが、生活能力や問題解決能力はきわめて低い。これが今後の課題だ。
(岸)評価の方法が異なる。実際リムなど、新しい方法を採用しているが、生徒の動機付けに成功しても成績が一気に落ちてしまい悩んでいた。新しい方法を採用するには、新しい評価方法も同時に導入していく必要がある。

6)ワークシート
(ハムゼ)ワークシートとは、生徒の高次思考力を促すためのものだ。教師が言ったことをコピーするのは、ワークシートではない。UNRWAでもワークシートに関して誤解がおきていて、それは問題視している。ワークシートを、問題を解くための質問紙として扱っている人がいる。
(田邊先生)ワークシートとは、学習目標に達するため、生徒が参照できる道しるべ(milestone)である。達成にむけて、Small stepで、多様な人の意見も聞き入れながら学習を支援するための道具(Tool)である。
(Fukumiさn)ワークシートとタスクシートは違うのでは?
(岸)ワークシートにもいろんなレベルのものがある。目的応じて違う。考えさせるためのもの、実験したものを記述させるもの、教師が言ったキーワードをメモするもの(特に社会など)様々であり、ワークシートが果たす役割もいろいろである。ワークシートがどういうものかということに焦点を当てるより、ワークシートがいろんなタイプの授業の中でどのように授業を支援できるのかについて話し合ったほうがいい。

7)慶應で見学した家庭科の授業について
(ハムゼ)あれは知識伝達の典型的な学習でよくない。
(岸・田邊先生)あれはあれでいい授業だ。ワークシートを利用させて、生徒に開きさせない授業を展開していて、誰も寝たり退屈そうにしている生徒がいなかった。
(ハムゼ)今日見学した大学の授業ではほとんどの生徒が寝たり、違うことをしていた。知識伝達の典型的な例である。
(岸)今日見学した大学の授業は、内容が非常に難しく、また受講している学生の動機も様々である。単位がとりやすい授業ということで、とりあえず参加しているだけの学生もいるので、あの一面だけをいて、知識伝達の授業が悪いということはできない。
(岸)家庭科の授業に関して言えば、マルチ商法といった生徒にとって身近なテーマで、生徒は話を聞くだけでも非常に関心をもって授業に参加している。教師の話し方にもメリハリがあり、内容も難しくないので、生徒は声に出したり教師の支援がなくても、自分で自己内省することができているのでは。一方今日の大学の授業や古文や漢文といった難しい内容では、教師が一方的に知識を与えるだけでは、本当に分かっていない生徒がどんどん増えてくるので、場面場面で生徒の理解を確認するといったことが必要になる。つまりインタラクションや確認のためのアクティビティが必要になるだろう。このように、授業の内容によっても、適応できる授業スタイルは違うので一概に「これはダメだ」という決め付けはよくない。

以上のテーマについて3時間ディスカッションしました。なかなか終わりが見えないので、更に文献などを参考にしたり、他の人の意見を聞きながら理解を深めていきたいと思います。

今日もとても長い一日でした。みなさん、おつかれさまでした。

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