2007-10-02

学校訪問 4日目 (慶應義塾湘南藤沢中・高等部)


今日は、慶應の授業を見学する最後の日です。
午前中は授業見学、午後は大学の授業や現職の先生とのディスカッションをしました。
今日の活動時間は朝の8時半から夜の9時・・・・。だいぶがんばりました。
とくに6時から9時の3時間にわたるディスカッションは非常に意味深いものでした。
詳細については後ほど報告します。まずは授業見学についてと今後の課題について報告します。

今日見学した授業は以下のとおりです。
1時間目 英語
2時間目 英語(帰国子女クラス)
3時間目 美術
4時間目 英語(帰国子女クラス)

2時間目 英語のクラス(2時間目 帰国子女クラス)
この授業では、音楽をテーマに生徒が自分たちが好きな曲を選び、その曲についての背景、音楽の意味、自分の意見について発表する。生徒によって発表の内容にだいぶ差があるが、生徒によっては、クリティカルに曲の内容を解釈し、しっかり自分の意見を創造していた。たとえば、「この曲は、母の愛を表しているようにみえますが、作曲の・・の生まれた環境から実は・・・と意味しているのではないかと思います」「この曲はビートルズの最盛期の曲ですが、この曲がヒットした理由として・・・ということが考えられるのではないかと思います」といったように、単に曲の紹介ではなく、作者や歌手の背景、時代を考慮しながら曲について発表している生徒もいた。

ハムゼはクリティカルシンキングとクリエイティビティを視野にいれた実践だ、といって非常に興味を示していました。また、発表者だけでなく視聴者も発表に関わる工夫がされていた。たとえば、視聴者は発表者に対してコメント(メッセージ)をするようになっており、よかった点、改善したほうがいい点、興味をもった点をまとめていた。

高次思考力に興味を持っているハムゼは授業を観察する際、その授業がBLOOMが提案している教育の目標(Objective of the education)のどこにあたるかを分析できるようになっているのがすごく嬉しい。始めは、何の目的もなく授業を”見学”していたが、今は、動機付けの方法やタキソノミーを考慮した授業分析ができるようになっている。

ところで、今後の課題として、”Creativity"についてしっかり理解を深めたいと思った。自分の意見をいうこともCreativityということができるのか。意味を作り出すこと(Mean making)、知識を構築すること(Knowledge construction)、提案(Suggestion)など以外に何をCreativityということができるのか。イギリスの創造的学習を参考にしながらCreativityについて理解を深めたい。それが高次思考力の理解を促進させるだろう。

4時間目 英語クラス(帰国子女クラス)
この授業はだいぶ高度な授業内容だった。国連の会議という仮想空間を作り出し、各国の代表がどのような視点から”平和”について捉えているのかをグループごとに発表していた。

一番初めのグループは、(偶然にも)イスラエルからの代表の演説でハムゼもイスラエルの主張にだいぶ何か言い足そうな感じでした。しかし、これがこの授業の面白い点だと思った。なぜなら、次はオーストリア代表の演説でそこにはイスラエルとはまったく異なる視点で平和と捉えて今後の平和活動の提案をしている。つまり、それぞれのグループが、どこかの国の代表というアイデンティティを持って、自分たちの意見を述べ、相手の主張に対して、異論、反論し、自分の意見を論理的に主張していく。かなり高レベルではあるが、参加者全員の興味関心を一気にひきつけるものだった。「その考えは違う!!!」という怒りにも近い葛藤をもたせ、それに対して自分の国の立場から反論する。非常に興味深い授業だった。

この授業のポイントは以下のとおり
1)高次思考力に焦点を当てている
論理的思考、批判的思考、判断、選択、比較といった思考のプロセスが多く盛り込まれている。発表だけしかみていないので、どのように生徒の学習を支援しているかは分からなかったけれど、ここまで生徒たちが様々なリソースを利用して自分の意見をまとめるには、多くの工夫やしかけがあったに違いない。

2)Authentic(真正)な文脈での学習環境
国連の会議という場面を設定することで、非常にリアルな状況を作り出していた。実際に国連の旗を黒板に張り、会議の雰囲気を出すために各国の国旗を机に置き、マイクも設置。また、ロールプレイによりグループが各国の代表になることでその国の情報に責任をもつことができる。

3)葛藤を引き起こさせる工夫
他の国の意見、つまり異なる視点からの異見に対して、「それには合意できない」といった感情がでてくる。たとえば、イスラエルの主張は他の国の代表に刺激や葛藤を起こさせるものであった。それに対して、国の代表としてどのように理論的に相手を説得させるのか、そのプロセスの中で、高次思考力と表現力などさまざまな力を育成できると思った。

4)ICTの有効活用
発表の様子をビデオに撮っていた。自分たちの発表を振り返るというだけでなく、各国の代表の演説をニュースのために撮影されているという設定だ。つまり、カメラを単に撮影の道具として使うのではなく、カメラ自身も「国連会議を中継するカメラ」としてとらえ、カメラ目線で演説するような仕組みにしているのだ。演説の内容は紙にかいていて、それを見ることは許されているが、カメラがあることで、下ばかりをみず前を見て発表するように促している。教師が「前を向いて発表するように」と言うのではなく、前を向くような工夫をカメラを使ってしていたのも非常に興味深かった。

No comments: